飴色。mini.

20.


「三蔵さんのところに、今夜は泊っていきます」
そう父親に電話をかける。
相手が三蔵のところなら、文句はないだろう。
時々、過保護熱のようなものが出るらしく。
友人のところに泊まるにも、納得してもらうには苦労するときがある。
そんなときは、パートナーである金蝉さんに助けてもらうのだが。
「・・・うん、おやすみなさい」
そう言うと、通話を切った。
「天逢さん、何って?」
「わかった、って」
「それだけか?」
「うん」
三蔵さんのところに泊まるわけだからね。
心配いらないって判断したんでしょう、そう言って差し出されたマグカップを受け取った。
コーヒーの苦い香りが心地いい。
「そうか」
そう言うと、八戒の隣りに三蔵も座った。
歳の離れた三蔵は、八戒にとっては義兄となる。
八戒の実父である天逢と三蔵の実兄である金蝉が恋人という関係になって。
籍を入れたりとか、そういうことはしていないが。
親子として生活していたし、暮らしていた。
だから、三蔵は天逢のことを「天逢さん」と呼ぶ。
そして、八戒は金蝉のことを「金蝉さん」と呼ぶ。
今は三蔵が一人暮らしをしているから、一緒には住んでいないが。
何もできない三蔵のために、八戒が家事をするためにこの家に来る。
今晩のように、泊まっていくのは珍しい。
それも、外が今シーズン最高の積雪となっているからだった。
家の中にいても、外が白いのがわかる。
カーテン越しに、いつもより明るいから。
月明かりだけでは、こんなにも明るくはない。
「それ飲んだら、寝るか?」
「はい」
まだ湯気の立つそれを両手で包む。
すると、そっと頭を撫でられる。
「え?」
驚いて、そちらを向くと。
三蔵も驚いたような顔をしていた。
「あ、いや・・・」
そう言うと、手を八戒から離して。
横を向いてしまった。
少し耳が赤くなっているような気がするが。
気のせいということにしておこう。
八戒は両手に包んでいたカップをテーブルに置くと。
そっと三蔵に近づいた。
肩が触れるほどに近づいて、座り直す。
「それ、もう一度お願いしてもいいですか?」
その言葉に、三蔵は八戒のほうを向いた。
「頭を撫でてもらっても、いいですか?」
そっと頭を傾けて、目を閉じる。
「・・・どうして?」
そうは言いながらも、大きな手が八戒の頭に置かれて。
ゆるゆると撫でられる。
「懐かしいな、と思いまして」
「懐かしい?」
「はい、ずっと前によく天逢がこうしてくれたんです」
眠れなかったりしたときは、よくこうしてもらってました。
「・・・そうか」
ゆるゆると大きな手で撫でられる。
包まれているような気がして、心地いい。
幼い頃は、ひとりで眠れないと仕事をしている天逢にお願いをした。
眠るまで撫でていてほしい、と。
ベッドに入って、ゆっくりと頭を撫でられて。
それから数分で眠りについてしまう。
だから、こうして大きな手で撫でられていると。
八戒はそのまま三蔵の肩に持たれて、眠り出した。
いきなり八戒の体が傾いてきて、三蔵は思わずその体を抱きしめる。
穏やかな寝息を立てて眠っている八戒を見て。
思わず笑みを浮かべた。
甘えて、いたのだろうか。
懐かしい体温を思い出して。
そのまま八戒を抱き上げると、そっと寝室へと運ぶ。
その間も腕の中の寝顔を見ては、頬が緩む。
もっともっと甘やかしてやりたい。
そんなことを三蔵が考えていたなんて知ることもなく。
八戒はぐっすりと眠っていた。



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